2ヶ月間の育休取得を終えて

2020年1月より2月末までの丸二ヶ月間、育児休暇を取得させていただきました。 この背景にはmerci boxと呼ばれる会社の手厚い福利厚生があることと、実際にそれを用いて育休を取得した先輩パパ達が数多くいたからであり、改めて感謝しています。 ということで、恩の還元の意図も込めて、(前回経過を少し書いていたけど)今回はそのまとめです。

想定読者と前提条件

  • これから育休を取る(あるいは検討している)方(で一応エンジニア)に向けて
  • うちの環境がこうだった(他では違うこともある)前提条件としては、
    • 生後3〜4ヶ月目のできごと(生後すぐは妻の実家に里帰りしていた)
    • 一人目の子供(上の子がいるときっとまた状況は違う気がする)
    • 母乳育児(後述しますが、ミルク育児とは夫のできる活動に差がある)

TL;DR; やってみてどうだったか

  • ちょうど同じ時に育休を取っていた小泉進次郎が言うように、育休は全然休暇じゃないし、むしろ日常の仕事よりしんどかった
  • これまで妻より家事をやってこなかった人はやったほうが良い
  • 育児も仕事と一緒で、経験と慣れが必要
  • 同じく、市場(子供)が刻々と変わるのも仕事と一緒
  • 仕事への向き合い方、キャリア形成の考え方も変わりそう
  • 我が子は何よりも可愛いので幸せである

育児「休暇」ではない

やる前から忙しいだろうと思っていたけど、やってみたら本当に忙しかった。 どこでそう思うかというと、休日がないからだ。労働基準法に則った業務なら1日ごとの営業時間と休日があるが、育児は24時間/365日の作業だ。そういう意味ではwebサービスを運用しているエンジニアは作業をイメージしやすいかもしれない。ただし、そのサービスはActiveなインスタンスが2つあるだけで、それ以上のスケールアウトやバックアップがない。リクエストを捌くロードバランサはないので常にActiveでいる必要がある。
と書くと深刻そうにも読めるが、まぁこれは「夫婦」というサービスが始まったときからその運用は始まっているとも言える。子供という膨大なリクエストを送る顧客を手に入れたという変化だけかもしれない。

子供からのリクエストのトラフィックを捌くために

というわけで、子供からの要求をいかに対応するか、というのが結局のところ育休中に取り組むべきことだと思う。 この辺についてパートナーとよく話し合うこともこのまとまった時間があるからこそできること。 ただし、話し合うためにある程度2人の間での前提条件を合わせる必要があり、そのためにまず一通りの家事ができないといけない。

洗濯を普段やる人と全くやらない人では課題認識が違うので、その状態で「ドラム式乾燥機付き洗濯機」を買うかどうかを議論しても、その結果について双方納得することは多分難しい。 (余談としては、「ドラム式乾燥機付き洗濯機」は絶対に買うべき)

我が家の場合、お互いに一人暮らし経験があり、結婚後も共働きで家事は分担していたため、そこの差はあまりなかった。(俺が料理ができないというのが大きな差) 一方で、子育てに関しては生後3ヶ月まで妻が里帰り育児をしていたというのは大きな差だった。日々のオムツ替えや、3時間起きの授乳・夜中に寝てくれない、などを十分に経験していた妻と週末に少し参加していた俺のギャップは大きかった。

ギャップがある時にどうするかは前述の通り、前提を合わせるために追いつくしかないので、そこは妻を見習って頑張りましょう

育児も仕事と一緒で、経験と慣れが必要

1ヶ月経つくらいまでは、大変だった。 この頃に思っていたのは「2020年に育児はなんて非科学的なんだろう」ってこと。 特に妊娠から出産までの間で「科学の進歩」を感じた人は多いのではないか。 妊娠初期からエコーではクリアに赤ちゃんが見え、妊娠時期ごとのリスク一覧が都度提示され、さらには出生前診断など重い選択を迫られたりもする、、 一方で、産まれてきてからについては、「○○ヶ月頃に (夜泣き|人見知り|黄昏泣き|etcetc)が始まります、(抱っこして|あやして)あげましょう」みたいなことしか書いてない本もある。親という無限の愛の提供者としての踏み絵をさせられてるのではと思うほどだった。

それでも2ヶ月目になるとようやく慣れてきた。それによって考え方も変わる様になった。 例えば、最初はベッドで寝かすしつけをしたかったがうまくいかず、抱っこで寝かせながらモヤモヤした気持ちになっていたが、この頃になると朝寝は妻より自分が抱っこする方がスムーズにいくようになり、うちの子は寝る前にひと泣きするので、泣いたらシメたものとさえ思える様になった。

後半の方が体重が増えて大変だったハズなのだが、むしろ抱っこしてすぐ寝てくれるのがラクだと感じるようになったのは単純に慣れたのだと思う。根性論であり非科学的、と過去の自分にツッコまれればそうかもしれない。ただ、赤ちゃんは既にこの世に解き放たれたており、多種多様な環境で画一的な分析などできないんじゃないか、くらいの反論ができるようになった。大人に「○○すればXXになる」などの画一的なアプローチが当てはまらないように、赤ちゃんもそうであり、それが人間ってものだと思って納得できるようになった。

結果は後からついてくるものというのも仕事っぽいし、結果がでると楽しいものである。

母乳育児の父としての辛さ

特に母乳育児環境下において「結果が出て楽しい」と父親が感じられるまでは一定の時間がかかるのでそこは心して臨んでいただきたい。 授乳は生後間もない育児におけるハイライトであり、実際それによって赤ちゃんは成長するし、育てている実感も得られる(と思う)。赤ちゃんからの信頼も圧倒的である。
父親はそこにコミットできないので、最初は「マイナスをゼロにする作業」しかできないように感じる。夜に泣いたら寝かす、オムツが汚れたら替える、などの繰り返しだ。新生児の体重はみるみる増えていくけど、自分はそれにどんだけ貢献できているんだろうか、、みたいなことを悩まずに、「こうしたら寝てくれる」「お風呂であれすると機嫌が良い」などできることを少しずつ増やしていけると良い。

前提が揃ったところで、議論開始

そんなこんなで、ある程度対等に話せる様になり、「子供からの要求をいかに対応するか」というオペレーションの対応方針検討になる。 とはいえここは変数が多いので、それぞれに何を代入するか次第と言える。例えば

  • 保育園には(いつから)入れる/入れない
  • 子供はいつまでに何人欲しいうちの今何人目
  • 自分がやりたい、相手にやってほしい家事は何か
  • 日々の安定稼働第一か、多少の波風を時に許容しつつリフレッシュするのを目指すか

などがあり、どういう状態を想定してどういうアクションをするかがポイントになる

市場(子供)が刻々と変わるのも仕事と一緒

と、そこまで考えても全然終わりじゃない。というと身も蓋もないけど、子供が成長するのも重要な変数の一つなのだ。例えば、ちょうど今回の育休が終わったタイミングで離乳食が始まった。上記の変数に「子供の食事をどうするか」というものはなかった。何故ならば母乳一択だったからだ。離乳食だと俺でも担当できることになるので、そうしたら育休期間中に話した内容をアップデートする必要があるかもしれない。

市場は逐次変化するし、それによって発生する案件があって、アサインされる人がいて、タスクの整理分担があって、というのも仕事と一緒だ。

本業の仕事への向き合い方、キャリア形成の考え方も変わりそう

育休を取ったことで、本業の仕事への捉え方が変わるかもという部分も感じている。 よく言うワークライフバランスの感覚はもちろんそうだが、それ以外に育休からの復帰というのは「自分が一定期間いなくてもまわる職場を自分の目で確認できる機会」だと感じた。

「どんなにそれまで頑張っていても、自分がいなくなっても仕事はまわる」これは転職を経験すると感じることができる大事な事実だ。ただ、それを実際にこの目で見たことまではなかったが、今回はそれが見られる初めてのケースだった。 見て大丈夫そうなのでじゃあ辞めようとも、見たらダメダメだったのでもっとやらねばとも思わないが、なんというか「やるべきことをしっかりやる」のが大事なのではないか。
やるべきことをやれば、次に休むとき/異動するとき/辞めるときに迷惑をかけずに引き継げる
やるべきことをやれば、次に戻ったとき/移ってきたとき/入社したときに貢献できる

我が子は何よりも可愛いので幸せである

期間中には区が主催する赤ちゃんクラブ(要はママ同士のコミュニケーションイベント)や、生後4ヶ月検診などにも参加できた。 赤ちゃんクラブには30組程度の親子が来ていたが、父親も参加していたのは自分だけだった。これが男性の育休取得率のパーセンテージを体現しているなと感じた。(このイベント自体が生後3,4ヶ月向けなので、生後直後だったらもう少し多いのだろうか)

その30組の中で、我が子がダントツで可愛かった。
育児に疲れた時こそ、(コロナが落ち着いたら)是非イベントごとに参加すると良い(予防接種・生後検診・行政が主催する取り組みなど)。 我が子はどこで会う誰よりも可愛いので、それを感じるたびにリフレッシュされる。

まとめると、結構先々まで適用していけるのではないかという考え方を整理できた経験だったと思う。
ここまでできたのは、まとまった時間があり、それだけに集中できたのが大きい。週末だけの育児ではできることもここまで増えなかったし、それによって考えが変わることもなかったのではないかと思う。

貴重な時間を一緒に過ごしてくれた妻と我が子に感謝の2ヶ月でした。